輸入を生業(なりわい)にする人にとって、商品の安定確保は、絶対に譲れない生命線です。ここで活躍するのが信用状(L/C)です。
ところが信用状は、都度銀行に開設を依頼する必要があり、煩雑さは馬鹿になりません。こんな悩み解消の一助にと思い、今回は回転する信用状の話をとりあげました。
まず冒頭お断りしなければならないのは、回転する信用状といっても、別に発行された信用状が、相手の手許でくるくる回るわけではありません。
回転するのは信用状の残高です。実は一定の条件のもとに復元するのです。ですから「残高復元信用状」とでも表現すれば良いのですが、英語で「Revolving L/C」(リボルビングL/C)と呼んでおり、日本では訳して「回転信用状」と称しています。
ちなみにクレジットカード取引で使われる、リボ払い(リボルビング払い)はクレジットガード利用者が、毎月一定の金額を払うという点では、この信用状の輸入者とよく似た立場になります。
さて回転信用状の取扱はといいますと、輸出者の手許に到着した時点では、普通の信用状と特に変わりはありません。
信用状金額と期間が記載されており、それに従って船積すればよいわけです。
ただ普通の信用状はそれで用済みで、次の船積には新しい信用状が必要となるのですが、この回転信用状では一定の期間(通常は一月)が経過すると、残高が自動的に当初の金額にもどり、期間も延長となります。この動きが回転の所以といえば、お分かりいただけますでしょうか。
この部分、輸入者は特に手続きは要りません。当初の信用状に回転条件が記載されているからです。こんな便利な信用状ですが、信用状取引をしていても、今まで一回もお目にかかったことは無い。と言われる方が圧倒的だと思います。私もその点では同感です。私のいたメガバンクでも、回転信用状を発行していたのは、全国で10社もありませんでした。ほとんどの営業店では取り扱いが無いので、担当者も知らない人がほとんどでした。
ではなぜこのようなことが起きていたのでしょうか。
じつはその原因は、回転信用状に対する銀行の与信判断が、ある意味特殊だからです。
例えば金額USD100千、期間一ヶ月の信用状を開設するときは、金額で与信を判断します。ところが回転信用状の場合は、それだけでは足りません。判断要素に残高復元の回数が加わります。一年間であれば12回が掛け算されます。見ようによっては残高が回転しているようです。つまり通常の信用状に比べてこの例でいうと、12倍の与信金額になるのです。
輸出入の当事者にはUSD100千の信用状であっても、信用状を発行する銀行にとってはUSD1,200千!になるのです。これでは簡単にOKは出来ません。こんな事情もあって、少なくとも銀行からは回転信用状を、売り込むことはまずしません。そのためほとんど利用されることもなく、銀行担当者にも知られることが無い。というわけです。
しかし、輸出者にとって使い勝手の良さは抜群ですので、商品をどうしても確保したいが、前金を払うほどの資金的な余裕はない。
こんな時には銀行担当者にこの信用状の話をぶつけてみて、検討させるのも一案と思います。
関連貿易用語:Revolving LC
2017/01/24