認定事業者とは、前回コラムに書きました通り、貨物のセキュリティ管理と法制遵守(コンプライアンス)体制の整った事業者が、税関の承認・認定を受ける制度です。
では、認定事業者になるにはどのような要件を満たさなければならないのでしょうか?
具体的には
・コンプライアンス体制を整えるための
-統括部門が設けられている
-責任者や知識・経験のある人員が十分に配置されている
-コンプライアンス規則がある
・貨物や書類の管理がしっかりなされており、そのための措置を設けている
・税関との連絡体制、社内での連絡体制が整っている
・業務委託先がある場合、指導が行き届いている
・監査体制を整えている、他法令遵守規則がある
・物理的・人的・情報セキュリティが整っている
等です。
加えて、税関とオンラインでつながるNACCSシステムを導入していることや過去の一定期間において法令違反をしていないこと、また違反があった場合は一定の期間を経過していることなども満たしていなければなりません。
詳しくは関税のホームページでもチェックリストが掲載されているので参照することができます。
関税のホームページはこちらから。
チェックリストを確認したうえ、AEO取得希望事業者は税関のAEO担当部門に連絡します。
認定事業者になると物流のリードタイム短縮など、メリットがあることは前回コラムにも書いた通りですが、さらに重要なのが貨物のセキュリティ管理と法制遵守を取引先にアピールできることではないでしょうか。
AEO導入の大きなきっかけとなったのがアメリカでの9・11テロにあります。
欧米ではテロをきっかけに、セキュリティに対する関心が高まり、多くの事業者がビジネス戦略としてAEOを取得しています。また、世界各国においてAEO制度もしくはそれと同等の制度が導入されており、世界では40組以上の相互承認が成立しています。
日本は現在、ニュージーランド、米国、カナダ、EU、韓国、シンガポール、マレーシア、香港が相互承認を実施しています。相互承認国に輸出した場合、相手国での通関の際も審査・検査が軽減されるなどの効果により、リードタイムが確保されます。
しかし、上述した通り、AEO取得の壁は小さくありません。
監査体制も整えてなければならず、当初より変更があった場合は届ける必要があります。NACCS導入も小さな事業者には大きな負担となるでしょう。
結局、AEOを取得した通関業者や倉庫業者を利用するのがリードタイム確保の近道でしょう。AEO通関業者に特例委託輸入申告または特定委託輸出申告を依頼して行います。
また、輸入の場合、申告価格が20万円以下の少額貨物以外の申告には保全担保が必要となります。保全担保を税関に提供しなければ特例委託輸入申告は利用できません。さらに、過去の一定期間に関税関係法令に違反がないことも要件です。
特定委託輸出申告については認定通関業者が特定保税運送者と連携する必要がありますが、特定保税運送者は現在7者のみで、連携しようにも難しい、というのが現状です。
AEO制度が導入されて8年、まだまだ全面的にスムーズに運用されるには至っていないようです。
2017/01/09