レストランの予約は取れるのに、なぜ為替予約は取れないのか?
今回のお題は「為替先物予約」(以下「為替予約」)です。皆さんは日常的に予約を取っておられると思います。ところが為替予約は、銀行の窓口で頼んでも、まず取らせてくれません。
どこが違うのでしょうか。今回はここのお話です。
皆さん予約と言えば何を思い浮かべますか?レストラン、航空会社、病院、スポーツ観戦等々でしょうか。
何れも予約したいと申し出れば、空きがあれば受け付けてくれます。料金前払いかもしれませんが、特にそれ以上の手続きは不要です。あとは当日そこに行けば予約の役目は終了です。
為替予約も実は流れは一緒です。
ただ一点だけ違う点は、為替予約は銀行にとって与信になる点です。銀行にとってお金を貸すのと同じことなのです。(正確に言うと与信に準ずるとする銀行が多いのと、僅かですが与信にはならない場合があります。)
与信であれば審査が必要ですし、いろいろと書類も提出しなければなりません。場合によっては担保や保証人といった話になるかもしれません。店頭で「予約したい」と言われても、すぐにはOKにならない状況は、ご理解頂けますか。
でもよく考えると、なぜ与信になるのでしょうか。
ここが一番わかり難いかもしれません。
「為替予約」自体は皆さんが想像される通り、将来のある時点での通貨交換の約束です。これだけではお金は動きません。与信となぜ同じなのか説明できそうもありません。
では実際に銀行が為替予約を、顧客と締結したときの動きを見てみましょう。
顧客から予約の申し出を受けると、銀行の担当者は通貨や金額、行使日(予約使用日のこと)を聴取します。レートは本部に問い合わせたり、オンラインで照会し、顧客に提示します。顧客がそのレートでよければ、めでたく為替予約の一丁上がりです。
顧客とはこれでよいのですが、銀行はこの予約を仕上げるために、実際には同じ金額での売買を、同時に東京為替市場で行ってしまいます。
詳しいことは省きますが、対顧客では何もお金を動かしませんが、銀行としては為替予約に見合う取引は実施済なのです。もし予約をとっても顧客が使ってくれないと、銀行としては貸し倒れ同様になってしまうのです。
つまり与信と同じような考え方をしないと、銀行は不測の損害を被る可能性があるのです。
ただ融資と違って予約金額全額が損失になる事は、まずないので100%与信と同じ扱いをする銀行は、少ないと思います。
こんな事情があるので銀行の窓口では、為替予約はすぐ受けては貰えないわけなのです。しかし数少ない例外として、外貨定期預金の元金と税引後利息に対しては、為替予約を与信とせずに受けてくれる銀行もあるので、
外貨預金で運用しているのであれば、一度銀行に問い合わせるのもいいかもしれません。
このように顧客の見えない所で、取引をしている為替予約の説明は、窓口泣かせで、担当者が説明に四苦八苦していました。
皆さんに取引銀行を困らせろ。とは言いませんが、勉強してもらう意味で、「為替予約」を取りたいと窓口で申し出るのも、いいことかもしれません。
2016/07/29 貿易実務の情報サイトらくらく貿易