銀行からお金を借りるとき、
だれも何の通貨で借りようか。とは考えたりしません。
日本円に決めているからです。
ただ日本円以外が良い場合もあります。
今回はそんなときの、外貨でお金を借りるお話です。
銀行では外貨での貸し出しを「インパクトローン」と呼びます。
(和製英語です。外人さんには通じません。恐らく。ご注意を。)
本当は通貨の種類制限はないのですが、
現実には米ドルやユーロ、英ポンドが大半です。
借入手続きは、日本円の借り入れと全く一緒で、
銀行の審査が下りればそれでOKです。
ただ銀行には、なぜ外貨なのか。の説明は必要かもしれません。
インパクトローンには期間や金額、返済方法の制限はありません。
銀行に必要書類を提出して、借入実行日に外貨を受け取るだけです。
さてこのインパクトローン。資金使途にも制限はありません。
そのため過去には外貨金利が円金利より低いときをねらって、
円資金調達の代替品扱いをしたこともありました。
現在は円金利マイナス状態ですから、このパターンはありません。
代わって為替リスクヘッジ策として、使われることがあります。
輸出業者さんのように外貨債権がある人にとって、
為替リスクとは、相場が円高に行ってしまうことです。
(円高になると、円転したときに受取額が減ってしまいます。)
これへのヘッジといえば、円転の為替予約がまず頭に浮かびます。
為替予約も銀行の与信の一種なので、
銀行の対応はインパクトローンと大差はありません。
が、利用する側からみれば、
約定レートに含まれる為替手数料が馬鹿になりません。
あまり大きな声では言えませんが、
直物と違って先物はベースレートがわかり難いので、
此処の部分で私もだいぶ稼がせてもらいました。
その点、インパクトローンにすれば、
返済ないしは内入れするときに、円で用意するか外貨で用意するかは、
皆さんの自由なので、銀行はもうける場面が限られてきます。
例えば円預金を使い外貨で返済するのであれば、
直物相場が適用されるので、先物に比べて分かり易いです。
さらに回収した外貨建て輸出代金で返済、内入れするのなら、
その部分での為替リスクはゼロになります。
(これを為替マリーと呼びます)
為替マリーは海外の取引相手との交渉は不要であり、
返済、内入れの金額割合は、自分で自由に決められます。
(銀行は面倒でしょうが)
このようにインパクトローンは、お役にたつことがあります。
特に外貨債権が常時発生する事業者にとっては、
インパクトローンを一定程度持っておくのは、
有効な為替リスクヘッジになると思います。
銀行の担当者に単純にインパクトローンの話を聞いても、
うやむやにされるかもしれません。
でも為替リスクヘッジのためと、目的を明確にして、
それへの銀行提案を用意させるというのも、
一つの付き合い方だと思います。
2016/05/30 貿易実務の情報サイトらくらく貿易