はじめに。
皆さんは、銀行の人と接点がありますか?
「銀行からの問い合わせにでたら、話がかみ合わなくて困った。」とか、
「銀行の人に必死に説明しても、ピンボケの会話になってしまった。」
こんな経験を持つ人が、意外に多いのではないでしょうか。
なぜこんなことになるのでしょうか?
どうすれば銀行と、上手に付き合えるのでしょうか?
ここではそういったお考えをお持ちの貿易担当の皆さんに、
銀行のロジックや銀行員の考えそうなことを、
35年間の経験をもとに、お伝えしたいと思います。
この小文が今後のお仕事の参考になれば幸いです。
それではまず第1回目として、
銀行の考える貿易と、皆さんのお仕事である貿易の違いを説明します。
よく貿易とは「モノ」「カミ」「カネ」の3要素からなるといいます。
それぞれの要素は、皆さんよく御存じと思います。
この三つどれもが重要な要素です。言うまでもありません。
しかし銀行は貿易を外国為替(以下外為と略します)の面から見ています。
外為というのは、銀行の三大業務「預金・融資・為替」の内、
為替の一部を構成するものです。
(為替は内国為替と外国為替で構成されます)
皆さんの貿易と、銀行の外為、この二つどこが違うのかと言えば、
実はかなり違いがあります。
外為には「モノ」の要素が全くありません。「カミ」もわずかです。
あるのはどこまでも「カネ」「カネ」「カネ」・・・・です。
こう言うと身もふたもないのですが、銀行の存在意義を考えれば、
納得していただけるのではと、ちょっとずうずうしく考えています。
では銀行がそれ程までに重く見ている「カネ」の部分ですが、
これにウェイトを付けてみましょう。
これを考えるときは、銀行取引を大きく2つのカテゴリーに分けます。
一つ目は銀行で「送金ベース」とか「クリーン」と呼んでいる取引です。
これは船積書類が銀行を経由しません。
銀行の役割は決済資金の受け渡しだけです。
この場合は100%「貿易」=「外為」=「カネ」となります。
皆さんも代金回収が送金の場合は、銀行から改めて聞かれない限りは、
銀行と貨物や書類の話はしないと思います。
一方、銀行の人間も事務処理に必要なこと以外では、
まず話をすることはありません。
ある意味、ズレの起きにくい部分と言えます。
二つ目は「ドキュメンタリー」と呼んでいる取引です。
こちらは船積書類が銀行を経由します。
なので、多少ですが「カネ」以外にも、「カミ」の部分があります。
銀行の人間と「カネ」以外の部分で、接点が出来るわけです。
(もちろんこの場合でも、「モノ」は全く関係なしです。)
ただどうでしょうか?
銀行実務に携わった人間から見ると、
船積書類を扱うと言っても、自分で作成しているわけではありません。
なので余り「カミ」の部分で役割を発揮しているとは言えません。
手間はクリーン取引よりかかるのですが「3:7」ぐらいで、
やはり「カネ」が中心の世界です。
アバウトな話ですみませんが、実態はそんなところです。
「ドキュメンタリー取引」の特徴は前に述べた通り、
銀行の担当者との間で、貨物や書類の話が
出てくる可能性があることです。
実は皆さんが、「話がかみ合わない!」と感じるのは、
ここの部分なのです。
私も企業の貿易担当者と話をするとき、
銀行としては依頼を受けた「外為」の事務処理について、
「貿易」を仕事とする皆さんと、何が問題になっているのか。
解決に向けてどうすればいいのか。等々を打合せたいのに、
うまく話がかみ合わず、貨物あるいは売買契約の話になって、
困ってしまった経験が何度もあります。
逆に言えば、銀行の人間は「モノ」や「カミ」に関心は余りなく、
事務処理を早く終了させるため、「モノ」や「カミ」についても、
話をしているだけなのです。
ここまでお話しすると、見えてくることはありませんか。
冒頭書きました
「銀行からの問い合わせにでたら、話がかみ合わなくて困った。」
というのは、銀行の考える貿易(実は外為ですが)と、
皆さんの貿易が一致していない部分が、話題となったため考えられます。
銀行の関心事は「カネ」の部分ですから、
このような話をするときは、意識して「カネ」に焦点を当てるべきです。
これがここでの結論となります。
「モノ」や「カミ」の話になっても、あくまでも「カネ」が前提です。
何やら改めて「銀行=カネ」の公式を見せつけられるようで、
初回から意気の上がらない話となってしまいましたが、
次回は、そんな銀行とどう付き合えばよいのかを、
お伝えしたいと思います。
2015/10/22 貿易実務の情報サイトらくらく貿易