船荷証券(B/L)が有価証券であることはよく知られています。
このB/Lが担保となり代金支払と引き換えに貨物の引き渡しが行われます。
輸出者は代金回収を確実にするために、銀行を介在させて(=LCを使って)、輸出書類を担保に輸出リスク回避を行います。
最近、とある商社からまったく違うケースの相談を受けました。
■輸出リスクを回避するため?
その相談の内容とは
「仕入先メーカーから輸出LCを担保に入れて欲しい」と言われているが、このようなLC開設を輸出者に依頼するにはどうしたよいか?
具体的には、メーカーへの支払金額分(輸出金額の一部分)をメーカー宛に譲渡することができるのか?
といった相談です。
つまり、仕入先メーカーから支払保証を求められているわけです。
譲渡可能信用状(Transferrable L/C)を利用する方法が考えられます。
今回のケースのようにL/C総額の一部分だけを譲渡し、L/Cを輸出者に開いてもらうことは可能かもしれません。
しかし、日本の銀行はこのようなイレギュラー(一部譲渡)なケースについては対応していないのが現実のようです。
結論として、全額を譲渡してメーカーから輸出商社のコミッションをあとで受け取る、という方法しかないようです。
これではメーカーに輸出取引の全貌を開示してしまうことになります。
■メーカーが強くなっている?
かつては、「商社金融」とか「前渡金」といった制度がありました。
商社がメーカーに対して仕入れ代金の一部または全部を、輸出取引の前に資金貸付として行っていたのです。
メーカーは商社を介在した間接輸出で輸出リスクを回避していました。
このような時代はすっかり変わってしまいました。
・メーカーの財務体質が強くなり商社金融に頼らなくてもよい
・商社自体が個別の売買取引から投資案件に軸足を移している
表裏一体の傾向になってきているようです。
そのためにメーカーの「直接輸出」モデルが増えてきているわけです。
商社経験の長い筆者としては、輸出商社からの輸出リスクヘッジについて、時代の変遷と今後の海外展開を考えさせられる相談でした。
輸出者にとって最大の輸出リスクは買主からの代金の回収にあると思います。
このリスクをメーカー自身で負担することをしたくないのでしょうか。
輸出リスクを負担したくないため、商社を介在した間接輸出を選び、さらに支払保証としてL/C担保を求めているように思えました。
2015/05/10