北米西海岸港湾ストの労使交渉が合意に達してから2ヶ月あまり、正常化に向けてはまだ多くの課題が横たわっているようです。
最近の報道をまとめると以下のような点が浮き彫りになってきます。
・まだ沖待ちしているコンテナ船が多く、最大で3週間のスケジュールに遅れが出ている
・港湾機能が正常化するには3カ月以上かかる模様
・コンテナターミナルの混乱の影響は5月ごろまで残る見通し
・航空輸送へのシフトが増加し1-3月期は前年比30%増
港湾荷役オペレーションのスローダウン戦術による影響だけでなく、以前から指摘されていた米国内でのシャーシ不足の問題が、港湾作業の正常化への足かせになっているようです。
そのために海上輸送から航空輸送へのシフトが加速化しています。
コンテナ船会社は臨時船を投入して空コンテナの調整とスケジュール維持などの対応に追われています。
何故このような事態になるとコンテナ船の運航調整に多大な影響がでるのでしょうか。
■コンテナ船運航キャリアー、世界規模での取組み
コンテナの積み下ろし作業は陸上に設置されているコンテナ専用クレーンで行います。
コンテナ船は荷役クレーンを持っていないからです。
今回の北米西海岸港湾ストでは、貨物を積まずに空の20フィートコンテナを20万BOX以上もシフトしているようです。
通常のコンテナ船は20フィートコンテナ換算で10,000BOX強の積載量ですから、20万BOX以上もシフトするためには15-20隻
程度のコンテナ船が必要になるという計算になります。
決して今回の港湾ストで問題がクローズアップされたわけではなく、世界各地のコンテナが偏在してしまっていることへの対応が急務な
ため、世界規模で正常化への課題に取り組んでいます。
■LINERとTRAMPER
コンテナ船は貨物の有無にかかわらずスケジュールどおりに運航されます。
そのため、LINER(定期運航)といわれています。
一方、穀物やバラ積み貨物は需要に応じて用船契約をしたうえで運行されます。5万トン以上の貨物船をフルチャーターするため、RAMPER(不定期運航)と呼ばれています。
一般的に輸出入ビジネスで利用される貨物の物量はフルチャーターベースではありませんので、コンテナ船が利用されます。
現在、コンテナ船各社が臨時船を投入してまで空コンテナの調整とスケジュール維持などの対応をしているのは、定期運航を守るためです。
コンテナ船を利用した安定的なサプライチェインの裏側では、コンテナ船各社のこのようなサービスが根底にあることを痛感させられます。
2015/04/08